1221ゆめ

一場面では地上からあの人の家を見上げていた。夢の中でわたしは現実だともっと高いだろうな、と思った。

終業式だったのにシャツが一枚もなかった。胸元につけるリボンもどこに置いたか怪しい。

あの人は畳の部屋に敷いた布団の上で眠っていた。布団にくるまってまるでミイラのように。あの人もきっとシャツが必要なのにそれも見当たらない、困らせてしまう。
あの人はつらそうに血の混じった粘度の高い痰を吐いた。寝ぼけているから分かっていない、わたしはティッシュでそれを拭う。また吐く、拭う。

辛い夢を見たあの人は、わたしに向かって話す。夢なのに、泣いている。わたしも夢なのに。
あの人は肌質が似ている別人に変化したけれど、中身が変わらないので関係ない。
医者なのに。セックスをしたけれど。
もし現実でそんな話をされたらわたしは死にたくなるだろうな、と思いながら夢の中なので心が動かない。わたしに寄りかかり涙を見せるそれだけが重要で、わたしの使命はひとつも取りこぼさずに聞くことで泣かせてあげることだった。
辛い夢と現実を混同させるようなものが周りに落ちている。夢を見ているわたしはそれに動揺する、同地点に存在するわたしは話を聞き続ける。


目覚める。
人工の光をみるとこの大切なことが失われてしまう。
メモを開き目をつぶって断片を残す。

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とける。
完全に消滅したあの人は本物にすり替えられた。